第29回 総務責任者会議
2025年11月26日開催
◆講演:AI活用の最前線、失敗と成功から見えてきたベストプラクティス
講師:株式会社LegalOn Technologies 人事グループ/ゼネラルマネージャー AI活用推進PJ「PJ AIM」プロジェクトリーダー 副島司氏
企業におけるAI活用の場面が急速に広がる中、総務部門では、ルールや運用方法の整備化が喫緊の課題となっています。今年のJFN総務責任者会議では、AIを活用したリーガルAIサービスを提供する株式会社LegalOn Technologiesの副島司氏をお招きして講演を開催し、リアルで24名、リモートで19名、37社43名が出席しました。
LegalOn Technologies社は、2017年に設立され、約850名の従業員を抱えて、法務、コーポレート業務に関するAIサービスの企画・開発を行っている企業です。登壇した副島氏は、労務・総務・採用を主として、ITヘルプデスクや、プロダクト開発、AI活用推進プロジェクトと多くの業務に携わっていらっしゃいます。入社以前は総務畑で経験を積み、開発とは無縁だったと語る副島氏ですが、AIで作成したアバターによる同社CEO角田望氏のプレゼン動画を披露した後、実際のAI活用法などをわかりやすくプレゼンテーションしてくださいました。

●AI活用プロジェクトPJ-AIM
副島氏がリーダーを務めるPJ-AIM(プロジェクトエイム)は、全従業員がAIを使いこなす土壌を作り、AIカンパニー化と業績達成への貢献を目的としている。
ChatGPT、Gemini、NotebookLM、Notion AIを導入している同社では、各ツール別アクティブ率の目標を掲げ、常に一定以上の稼働を維持することで、いわゆる“業務のための業務”を削減し、生産量の最大化を図っている。
●AIの安全な活用
プロジェクトでは、従業員がAIを使う上で、必要なルール整備や具体的な活用を社内で展開している。
多くのIT企業のAI活用が加速する一方で、一般企業の多くがAI導入を躊躇しているのが現状。
その要因は
・経験値のある人間を信頼して、仕事の依頼先としてAIを選択しない
・自分の業務での活用方法がわからない
・会社の利用ルールがわからない、情報をどこまで入れてよいか不安
・自身の業務とハルシネーション(=いわゆる“AIがつく嘘”)の相性が悪い
●阻害要因を認識したうえで、AI活用推進のために提示された2つのアプローチ
1)活用方法の横展開
再現性の高いプロンプトを社内共有するなど、すでに誰かが作った道を展開し、質を高める
2)社内ルールの整備
ガイドラインを明示し、誰が責任をとるのかを明確にするルールを策定
●AI学習の仕組み
AIを利用する際の不安要素 ⇒ 入力情報が学習に使われ、思わぬ形で情報流出しないか。
この不安を払拭するためにはAI学習の仕組みを理解することが重要。
・ChatGPTのメモリ機能は、AI自体が学習しているわけではない。
・フリープランを使う場合、設定のモデル改善スイッチをオフにすれば会社の情報を入れてもいいのか? ⇒ 非推奨
なぜならば、従業員一人一人のスイッチのオンオフ状態を会社側が管理するのが困難。情報マスキングなども含めて、社内のルール整備を行ったうえで、各ツールの特性を理解し、機能を正しく使いこなすことで、AIに対する不安は軽減され、活用が可能となる。
●LegalOn Technologies社が利用しているツールの特徴
・ChatGPT ⇒ 対話型AIとして広く普及、テキスト生成が得意
・Gemini ⇒ テキスト・画像・音声対応、Google Workspaceとの連携、高度な推論能力
・NotebookLM ⇒ 資料を自動で理解・整理し、出典付き回答・長文要約・比較表・Q&A生成などが得意
●AIの具体的な活用例
各ツールの活用事例として、NotebookLMで作成した新人研修資料を紹介
・研修用PDFをアップロード
・プロンプト「新人向けに噛み砕いて説明して」 ⇒ 図解付きの説明を生成
・プロンプト「理解度チェック5問を作って」 ⇒ テスト問題を作成
以上のステップで、瞬時にして資料が完成し、指導負担を大幅に軽減できた。
また有料のGemini3.0を使って、これまでPowerPointやGoogleスライドで作業していたのと全く変わらない感覚で作成された社内外向け資料も紹介された。
●活用事例の横展開
・プロンプト共有の仕組みを構築⇒プロンプトの表彰制度などを設けて、使いやすく再現性の高いプロンプトを社内共有
・ChatGPTのカスタムGPT機能 ⇒ 高い成果が得られるプロンプトを事前設定した状態で他者にChatGPTを使ってもらうことができる。例:稟議フォーマット作成GPT、製品仕様Q&A等
・アプリ経由だと必ず付随して発生する入力・出力の作業 ⇒ n8nやZapier等との連携で自動処理フロー化してAIへの指示業務時間を削減
・AI活用で一番重要なことは、AIに対する知識だけではない。業務のドメイン知識(専門的知識)があるからこそ、各自が深い業務知識をAIに覚えさせて、質の高いアウトプットを得ることが可能
●実践的なアイデア
1)AIによるニュース原稿代読
・ChatGPT/Gemini ⇒ 原稿を話し言葉に変換する
・Notebook ⇒ 過去に使用した原稿を入れて、局独自の言い回しを学習させる
・Gemini ⇒ 音声読み上げ
2)採用での補助的活用
・ChatGPTに社員の紹介文を入れて、社員の共通点を表示
・応募者のPR文を入れて社員と似たタイプを参考表示
・NotebookLMで過去の採用メモをナレッジ化
3)緊急時や深夜の原稿作成補助
・ChatGPTで「30秒速報原稿」を即生成
・Geminiに要約させてSNS・放送用の短文を出力
・NotebookLMに過去の災害対応メモを蓄積
●まとめ
本講演の3つのポイントは、
・AIは便利だが、踏み込んだ活用を進めるためには、環境とルールの整備は急務
・活用事例の横展開で定着を加速
・各ツールの特性を理解し、個人活用⇒チームでの活用⇒ノーコード×AIと段階的に進める
AIを活用して作成された資料を基に、具体例を盛り込んだ副島氏の明瞭かつ軽妙なプレゼンテーションに、参加者たちは最後まで熱心に耳を傾けていました。
日々進化するAIと共存する社会の到来に備え、業務の中でいかに活用していくかを改めて考える貴重な機会となりました。副島様、ありがとうございました。