JFN Association

全国FM放送協議会(JFN)

「JFN Association」は、JFNネットワーク、及び、加盟38社の各種活動情報(番組、イベント、営業展開等)を掲載しているWeb広報誌です。

2023年度JFN営業責任者会議<第一部>

2023.12.4(月)開催

●講演:株式会社龍角散 代表取締役社長 藤井 隆太氏
テーマ:老舗企業の経営革新

■自身の軌跡

 3歳から楽器に触れ、クラシック音楽に携わっていました。
 音楽学校(高校)入学時、父(先代社長)から「オーナーカンパニーだからといって世襲で継ぐ必要はない」その代わり「食えるようになれ」と言われました。また「援助はしない」とも言われ、高校時代から音楽に関わるアルバイトで収入を得ていました。音楽を学ぶにつれ、本場の空気を吸ってみたいと考えるようになり、パリへ留学。そのパリ留学が、自分にとって大きな転機となりました。

 音楽とは、自分の人生観を音楽を通じて表現するものです。他国のクラスメート達は、普段遊んでいるのに実演の時には演奏のレベルが非常に高く、その姿勢に驚きました。自分はといえば、恩師から「何がしたいのか?」と問われても答えられない始末で、挫折を感じました。自身の考えや主張を貫くことの大切さを痛感したのです。後々、そうしたパリでの経験が自分に叩き込まれていると感じました。
 「大企業のまね事は一切しない。同じことをしない。オンリーワンを目指す。そしてどうしたら役に立てるのか?」そう考える事は、自分が音楽の世界で感じた事だからです。まさか音楽の世界で培った想いが、後に企業経営の役に立つとは思っていませんでした。

 日本におけるクラシック音楽は案外マーケットが小さく、故に不安定なマーケットなのではないのかと感じていたところ、父から「一般のビジネスを経験すべき」との助言を受け、遠い親戚にあたる小林製薬へ入社しました。
 小林製薬では営業、マーケティングを経験し、のどの殺菌・消毒薬「のどぬ~る」の製品化にも携わりました。その後、三菱化成工業(現:三菱ケミカル)へ移り、販売を経験。当時主流だった商品は光磁気ディスクMO。音楽家としても興味のある録音技術の勉強もさせてもらいました。父の健康問題を理由に呼び戻される形で龍角散に入社し、翌1995年、代表取締役に就任しました。

■龍角散という企業

 創薬は江戸時代と220年を超える老舗。元々は水戸で医者を営む家系で、秋田に国替えとなりました。龍角散は、藩主の喘息を治すためにできた薬で、当時使用されていた生薬にちなんで、龍は龍脳、龍骨、角は鹿角霜(鹿の角)、散は散剤に由来し「龍角散」と名付けられました。

 国内ののどカテゴリー(鎮咳去痰薬、のど飴)ではシェアトップ。中でものど飴は売上の7割を占めていますが、医薬品の龍角散があるからこそ消費者のマインドセットが可能になるのです。また、ゼリー状のオブラートである「おくすり飲めたね」は、元々は介護用に開発されたものです。薬を飲むのが苦手な高齢者や幼児の服薬を補助する事を考えて作り、実にたくさんの人の命を救っています。

 商品やメディアに応じて、様々な広告を手掛けていますが、売れる広告と面白い広告は違うと実感したのは、社長就任時の売上低迷期のこと。低迷の原因は、ロングセラー製品の油断、ライフスタイルの変化、コアユーザー層の高齢化など。そこで社内では、事業の多角化や、風邪薬や胃薬等への展開が検討されていました。
 ところが、自社の企業イメージを徹底的に調べてみると自分たちが思っていることが違うと気づいたのです。早速、新規事業は取り止め、のど専門メーカーへの回帰を果たし、ブランドイメージを再構築しました。そして、普段使いの医薬品というコンセプトのもと「龍角散ダイレクト」の発売に至ったわけです。

 しかし、日本には広告規制の壁があります。医薬品には予防薬というカテゴリーは存在せず、承認書上の効果・効能以外は訴求できません。他社との比較広告はできず、テレビCMで薬を飲んだ後に微笑むシーンがあると即効性を暗示するとしてNGです。様々な規制がありますが、それらに抵触しないよう考えて広告を制作しています。

 画面だけでは伝えられないこともあるので、ラジオCMではテレビで言わないことも加えています。また、コロナ禍では、マスク生活の影響に訴求できる広告を作りました。そして「祭りの広告」。これは自分自身が交渉し、祭りをアピールしながら広告として仕上がるように制作しました。祭りを広告の題材に選んだのには、売上の季節変動を平準化する狙いがありました。従来、初夏は売上が下がっていましたが、祭りの声がれをテーマに訴求したのです。祭りを題材にした広告はラジオでも展開し、祭りの前と後で違うバージョンをオンエアしました。JFN38局にもご協力いただき、全国の祭りをアピールしながら商品を訴求することができました。この機動力とネットワークには大変感謝しています。

祭りの声が戻ってくる!全国パーソナリティ「お祭りレコメンドMAP!」

■龍角散の経営方針

●マネせずマネされず。
 ⇒マネできないくらい完成度の高いオンリーワンを。
●余計なお金は稼がない。
 ⇒儲かるか、よりも、誰かの役に立っているか。
●全ては社会貢献のために。

 私たちは何のために仕事をするのか。
 社会貢献が大切だと考えています。企業活動の結果として誰かが健康になれることが経営判断の基本です。社会に貢献できれば利益は付いてくるものでしょう。

■国民皆保険制度を守るために

 日本の人口はピークアウトしていきますが、高齢者率は上がっていて、医療や介護はますます大変になります。日本の国民皆保険制度は素晴らしいものだと思いますが、増大し続ける医療費に対し、保険料と患者の窓口負担ではまったく追い付かず、赤字国債で穴埋めしているのが現実で、これでは持続可能な社会制度とは言えません。あまりにも保険医療に頼りすぎてしまってはいないでしょうか。

 保険に頼りすぎることなくセルフメディケーションを推進し、なるべく病気にならないようにする、重症化させないように努力することが大切です。日本の制度を守るために頑張るということではなく、自らが健康でいられるための努力をして、結果として保険医療制度を温存しましょう。 多くの方々が健康になれば、もう少し良い国になっていくはずだと思いますので、こうした考え方を積極的に発信するために、メディアの皆さんの力をお借りしたいと考えています。

■講演の最後に

 会場からの「低迷の時代、周囲の反発もあったと思うが、どのような信念で経営改革にあたったか」との問いに、「徹底的に精査し、(方針を)決めたら成功するまでやり抜く」「途中で諦めるから失敗する」と言い切る藤井社長の姿に、受講者一同、背筋の伸びる思いがしました。
 多忙を極める中、JFNネットワークのためにご講演くださった藤井社長に、改めて感謝いたします。