23回目を迎えるCMコンクールには、今年もスタート当初から特別審査委員長としてご参加いただいているコラムニストの天野祐吉氏をはじめ、本主旨にご賛同いただき特別審査員を務めるコピーライターの小野田隆雄氏、漫画家の弘兼憲史氏、それからJFN各局のCM制作担当者38名により公開審査会が開かれた。各局が精力を注ぎ込んで制作したCMが次々に紹介され、熱のこもった審査が展開された。

  審査の結果、CM部門大賞は、TOKYO FM「愛の番号案内サービス」(味の素株式会社/120秒)が獲得。第1部門最優秀賞には、TOKYO FM「でんわばん」(カルピス株式会社/20秒)、第2部門最優秀賞は、FM長野「人生の自立」(株式会社プリオコーポレーション/90秒)がそれぞれ選ばれた。統一部門はかなりの接戦だったが、それぞれの国をイメージする"匂い"をテーマにした、FM石川「匂い」(日本航空/20秒)が日本航空賞を獲得した。

 TOKYO FMホールで行われた授賞式の冒頭で後藤亘JFN会長は、特別審査委員3氏をはじめ、日本航空の方々、報道関係者などの列席者に謝辞を述べた後、「今、我々は非常に厳しい状況下にあります。そのことが我々38局全体のクリエイティブに力を与えているような感じがいたします。企画部門においては、各地域の様々な企画開発が行われ、その企画が、ときには営業の販促であったり、ときには地域貢献であったりと色々な形で設けられていますが、地域によってそれぞれ問題も違うじゃないか、という提案もあり、来年は新たな賞として地域賞が加わるような話も聞いております。今は非常に厳しい環境ですが、皆さんと一緒になって、ラジオでもテレビでもない、新しいマルチメディア放送を一丸となって邁進していきたいと思っております」と挨拶を述べた。

  続いて、CM部門、企画部門の各賞の表彰が行われ、受賞した各局が賞状とトロフィーを受け取った。統一部門の表彰の後、日本航空の宣伝部部長の辻清氏は、「今回皆様のCMを拝聴し、地域色溢れる身近な旅に誘ってくれるようなCM、時流をとらえたCM、さらには私どもが最近、路線を開設した静岡の富士山空港をテーマにしたCMは、日本航空のいちばん新しい商品を題材にしてくれたテーマです。さらには日常生活の中ではなかなか感じることができない旅行というものを、もう一度見直していただける作品など、皆様がご苦労されたCMを拝聴しながら、私どもも何とかお応えしていかなければならないなと思った次第です。今回のCMでは、数ある優秀な作品の中から、少し違う観点での独創性を考慮し、選ばせていただきました」と講評の理由を語った。

CM部門大賞のTOKYO FM 企画部門大賞のTOKYO FM 統一部門日本航空賞のFM石川

  次に、CM部門の審査委員を務めた各氏がそれぞれ講評を述べた。はじめに漫画家の弘兼憲史氏は「中国の諺に"どんな分野でも10年続ければ偉大なり、20年続ければ恐るべし、そして30年続ければ歴史を作る"というのがあります。JFN賞はもう23年経って、すでに恐るべしという段階は過ぎています。私はラジオコマーシャルとは、どういうものかと考えてきましたが、ラジオのコマーシャルは、耳を澄まして最初から聴く方はほとんどいらっしゃらない。車を運転しながら、あるいは台所で仕事をしながら聴いているものなんですね。そうすると、CMの最初に非常にインパクトのある言葉で入らないと、なかなか耳に入らないのではないかと。こういうCM部門の審査などですと、最初からずっと聞き込むんですが、そうじゃない限りは、最初がインパクトのあるものでないと、なかなか聴いてもらえないのではないかと考えています。CMを作るときも、何かグッと心に残るもの、心に浸みるものを考えていただけるといいのではないかと思います。それから今の時世を反映したようなテーマがいいのではないかと思います。去年はエコロジーとか環境がテーマになっていたようですが、今年は不況が一つのテーマになったのかな、という気がしました。例えば、"1万メートルの空の上には不況はない"、といったCMは、不況をうまく使っている作品でした」


日本航空宣伝部部長  辻 清氏
特別審査委員長  天野祐吉氏
(コラムニスト)
特別審査委員  小野田隆雄氏
(コピーライター)
特別審査委員  弘兼憲史氏
(漫画家)
  続いて登壇した小野田隆雄氏は、「CMをずっと聴いていて考えたことは、私自身もそうですが、20秒のCMを作るとき、気を付けないと、20秒でどれだけ言えるだろうと考えてしまう。20秒の場合は、いちばん言いたいことをまず考えようじゃないか、そういうCMの方がきちんと聴くんじゃないかと。そういう意味では、今回受賞したFM石川の作品は、匂いというものをつかまえてきたこと、そういうつかまえ方は非常に素晴らしかったんじゃないかと思います。一方で、21秒以上のCMは、実際には、30秒以上のものが多かった。30秒と20秒では、相当違うと思います。30秒だと何でも言えそうな気がするのですが、もしかすると何を言ったらいけない、というのが大事になってくるのではないでしょうか。言っちゃいけないことを言わずにどうするかを考えていくのが、長いコマーシャルの手法なのかな、と作品を聴きながら考えていました。それから、統一部門日本航空のCMですが、たった20秒の中で夏の旅を伝えるのは、すさまじく難しい。もしやれと言われたら、自分はできるかどうか分からない。そういう意味で、"匂い"とかいくつか素晴らしい作品が出たことは嬉しかったと思います」と述べた。

  最後に特別審査委員長を務めた天野祐吉氏は、「ちょうど今、広告の土俵が大きく変わろうとしている時だと思います。皆さんの周辺でもウェブの台頭が、広告の土俵を変えている。多分、今までと同じような方法論で、同じ延長線上で広告を考えていると、広告はうまく機能しなくなるかもしれない、という大きな曲がり角にあることが確実な気がしています。ただ、広告の土俵は変わっても、広告の本質はまったく変わらないと思っています。優れた広告には時代を超えてオリジナリティがある、クリエイティビティがあると言ってもいいと思うんです。それはやっぱり、誰とも同じようなことを絶対にしない発想だと思います。どこかで聴いたな、どこかで見たな、ということは絶対に言わない。意地でもやらない。それがオリジナリティ、クリエイティブの基本的な精神だと僕は思っています。そういう点で、日本航空の"匂い"は、他の人が考えつかなかったことを考えつかれた。そこが素晴らしかったと思いました」

 次に企画部門各賞の表彰が行われた。今年度の企画部門の申請件数は、27社48件の中から、大賞が1件、優秀賞が3件、奨励賞2件、特別賞が1件選ばれ、それぞれ賞状とトロフィーが授与された。大賞は、TOKYO FM「SEIKO presents ゆく年くる年〜一秒の言葉」が獲得した。

  最後に、冨木田道臣JFN賞選考委員会委員長、TOKYO FM代表取締役社長から謝辞が述べられ2009年のJFN賞各賞の授賞式は、滞りなく終了した。




JFN賞2008の模様はこちら



△PAGE TOP