今年で22回目を数える、JFN賞2008・CMコンクールは、7月17日(木)、第1回目から審査員長として参加されているコラムニストの天野祐吉氏をはじめ、コピーライターの小野田隆雄氏、漫画家・弘兼憲史氏の3名を特別審査員に迎え開催された。また、今年の統一部門にはコスモ石油株式会社にご協賛いただき、CMの公開審査、表彰式が滞りなく行われた。

今回は、第1部門に47作品、第2部門に27作品、統一部門(コスモ石油株式会社)に38作品の応募があり、それぞれアイディアと独創性を駆使した作品が勝敗を競い合った。例年と同様に、地域の特色を活かした作品が多く見受けられたが、方言などを使った地方独特の強烈な個性を彷彿させる作品は少なく、全体的に控えめで上品な作品が多かったように感じられた。

特別審査員長の天野祐吉氏は「ラジオCMは、誰もが耳を傾けて、聴こうと思って聴いているわけではない。応募作品を聴いていつも感じることだが、ラジオの前に正座し、きちんと聴かないと分からないような早口のCMが多い。ゆっくり喋らないとリスナーの耳には入っていかないと思う」と述べた。コピーライターの小野田隆雄氏も「全体のCMの印象は、出演者のアップテンポな口調のものが多く、じっくりと心にしみ込んでくるような作品が少なかったように思う」と印象を語った。

そのような中で注目を集めたのが、昨年グランプリを取ったFMぐんまの3作品で、いずれも完成度の高い作品に仕上がっていた。CM制作に意欲的な姿勢と作品の内容に、審査員をはじめ出席者の評価が高かった。



  今年のCM大賞は、TOKYO FMの「プレッシャー電鉄/黄昏」(味の素株式会社/120秒)が受賞した。電車内の車掌のアナウンスが、定年を間近に控えたサラリーマンの胸にグサッと刺さる。今まで気づかなかった自らの駄目社員・亭主ぶりに反省する様子をコミカル&シニカルに描いた作品で、サラリーマンなら誰もがたどる定年の感慨がヒシヒシと伝わってくるようだった。

第1部門は、「身体測定」(TOKYO FM)とFM熊本の「クリーニングのシロヤパリガン 最後のお願い」が接戦だったが、最優秀賞は、FM熊本の「クリーニングのシロヤパリガン最後のお願い」(シロヤパリガン/20秒)が獲得した。FM熊本の作品は、政治家の演説口調に重ねたクリーニング店のお願いが功を奏したものになっている。第2部門の最優秀賞には、FMぐんまの「スナック」(FMぐんま(局報)/90秒)が選ばれ、コピー賞も同時に受賞した。FMぐんまの「スナック」は、昨年大賞を取った「2万円あれば…」の第二弾ともいうべき作品で、スナック内でのママと女性従業員、男性客の会話が効いている作品だった。天野祐吉氏は「コマーシャルというのは、どこかジャーナリスティックなところがないといけない。ラジオCMも時代背景や世相を映すことが望ましいと思う。FM熊本の演説口調には、今の政治家を皮肉った感じがあってうまいなあ、と思いますね。CMにも時代感覚をどんどん取り入れて欲しい。また、2万円でCMが流せます、と勧めているCMが面白いものでなければ誰もお金は出さない。その点、『スナック』はとても面白くできていて良いと思う。スナックに行って、1時間で2万円を使うのなら、自社CMを作ってみようかな、という気持ちにさせる」と述べた。



 統一部門には、全38局がエントリーした。エコをテーマに様々な作品が賞を競い合ったが、栄えあるコスモ石油賞には、広島FMの「きく」(40秒)が選ばれた。「きく」について、コスモ石油株式会社コーポレートコミュニケーション部広報室の小宮山剛市氏は、「『きく』は、ちょっとでも聴いてみようというところに力点を置いているCMで、なおかつポッドキャストに誘導するということが引っかかりました。“エコをきく”というコピーでも、私の中では評価が高くなりました」と述べた。
 


CM部門大賞のTOKYO FM 統一部門コスモ石油賞の広島FMに賞状を
授与する木村彌一
コスモ石油株式会社代表取締役社長
企画部門大賞を受賞したFM大阪
 
公開審査会に続いてTOKYO FMのホールで授賞式が行われた。後藤亘JFN会長はJFN賞が22年間続いたことへの思いと謝辞を冒頭で語った。

続いて、各賞を受賞した作品の発表が行われ、受賞各局それぞれに賞状とトロフィーが授与された。

統一部門のコスモ石油賞は、コスモ石油株式会社代表取締役の木村彌一社長から授与された。今回の制作ポイントは、FMリスナーに対して、番組がパソコンやポッドキャストでいつでも聴取できること、さらにホームページのアクセスを増加させ、コスモ アースコンシャス アクトの認知を高めること、あわせて環境活動に取り組む人たちの思いをリアルに伝え、コスモ石油の環境先進事業のイメージを拡大させることで、各局が制作に意欲的に取り組んだ。CMコンクールの審査に参加された同社コーポレートコミュニケーション部広報室の小宮山氏は、「ラジオ番組がパソコンやポッドキャストで聴くことができるという、具体的には、皆さんにとっては非常に難しいテーマで、ご苦労があったことはCMの中にも表れていると思います。環境活動というと、一般的にはゴミ拾いとかがテーマになりますが、エコというテーマはラジオを十分に活かすことができる。これからはラジオ媒体をコンテンツと考えて、パソコンやポッドキャストを利用してコンテンツをより多くのお客様に聴いていただき、我が社もお客様とコミュニケーションをより上手に取れたらと思いますので、ご協力をよろしくお願いいたします」と講評を語った。

コスモ石油株式会社
コーポレートコミュニケーション部
広報室小宮山剛市氏
特別審査員長
天野祐吉氏
特別審査員
小野田隆雄氏
特別審査員
弘兼憲史氏
 審査に携わった特別審査員の弘兼憲史氏は、「各局の作品を聴いていて毎回思うことは、1つの枠・テーマの中に、何でもかんでもぎゅうぎゅう押し込んでしまう傾向があることです。皆さん、時間や費用など制限がある中で、頑張って作っているのだと思いますが、詰め込みすぎるとなかなかポイントが伝わりにくいのではないでしょうか。統一部門のテーマをイメージするのは難しく、特徴を活かすことは大変だっと思いますが、ぜひ来年も頑張っていただきたい」と語った。

続いて壇上に上がった特別審査員の小野田隆雄氏は、「受賞局の皆様おめでとうございます。今回も上位にノミネートされたCMは、コピーなどが効いていて、いずれも甲乙付け難い作品だったと思います。整っている作品が、すべて良いのではないと思うのですが、うまいCMは誰が聴いても同じようにうまいと感じるものだと思います。これからも日々研鑽して欲しいと思います」と述べた。

22年間という長きに渡り、ずっと特別審査員としてご参加いただいている天野祐吉氏は、「この22年間のグランプリ作品を1本につなげて聴いてみたら、その時代の世の中の動きが、ずーっと生き生きと聞こえて来るのじゃないでしょうか。僕は脈々と続いている時代の動きも含めてコマーシャルができているのだと思うので、その時代を写し取っているコマーシャルがやはり注目されるのではないかと思います。大きな時代の変換期ので、大賞を取ったプレッシャー電鉄の会社員・男たちの変化や、心の問題なども時代とともに登場してきたテーマだと思います。これから先、どのように時代が変わり、ラジオを含めてメディア・コマーシャルが変わっていくのか、ずっと見たい。これからも様々なことを意識しながらCMを作って欲しいと思います」と審査講評を締めくくった。

CM部門の授与に続いて企画部門の表彰が行われた。大賞はFM大阪の「SDD(STOP! DRUNK DRIVING)PROJECT」。深刻な社会問題となっている飲酒運転問題に真正面から取り組み、その撲滅に向けた大きな意識喚起のうねりを創り上げた。大阪城ホールにおけるイベントでは、1万1000人を動員し、かつ2000万円を超すチケット代すべてをチャリティーにあて、また内閣府、警察庁、大阪府などを巻き込みその開催日2月20日が「交通事故ゼロを目指す日」に制定されるなど、民放FM局が大きく社会に貢献したことによる企画大賞の受賞となった。

その他、優秀賞には6局が選ばれ、特別賞には、TOKYO FMのFMケータイキャンペーン「全国民放FM53局&KDDI present桑田佳祐アコースティックライブin石垣島」が選ばれた。

最後に冨木田JFN賞選考委員会委員長、TOKYO FM代表取締役社長から閉会の挨拶が述べられ2008年のJFN賞各賞の授賞式は、滞りなく終了した。



JFN賞2007の模様はこちら



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