JFN賞2010 JFNのメディア価値とCM制作のクリエイティブ力の向上を目指して、毎年開催されるJFN賞。各局の力作が揃ったCM 部門(第1部門【20秒以内】、第2部門【21秒以上】、統一部門【スポンサーによる統一課題】)と企画部門の中から優秀な作品に各賞が与えられた。CM制作者の研鑽の場としても注目されているCMコンクールは、来年25回目を迎える。

CM大賞は、FM福岡の『ソワニエ研究室』、統一部門は・バイク王賞は、『灰かぶりの青春』(FM鹿児島)に決定!
 「広告を取り巻く状況が厳しい中、JFN各局のクリエイティブ能力を上げることが、JFNの布石を作っていくので、このCMコンクールの中から、少しでも 何かを発見し、つかんで帰って欲しい」と、FM福岡の箱崎常務取締役の挨拶を皮切りに、2010年のCMコンクール・公開審査会がスタートした。例年と同 様、特別審査委員長にコラムニストの天野祐吉氏、特別審査委員にコピーライターの小野田隆雄氏、漫画家の弘兼憲史氏の両氏を迎え、各局の制作者たちが参加 し、37局の応募作品に対する活発な意見交換が交わされた。

 審査基準は、表現方法の新しさや独創性、公共性があるかどうか、さらに効果的で影響力があるかどうかなどで、大賞、第1・第2部門の最優秀賞が決まる。 さらには奨励賞のブロック賞、出演者賞、コピー賞、制作者が1票を投じて選ぶ制作者審査員賞、そしてスポンサー協賛による統一部門・バイク王賞の各賞が選 出された。

 CM大賞は第1・第2部門、統一部門の中から、FM福岡の『ソワニエ研究室』が栄冠に輝き、最優秀賞は、第1部門が、『顔のむくみ』(FM山口)、第2 部門は、『恋の広角レンズ、望遠レンズ』(TOKYO F M)にそれぞれ決定した。統一部門・バイク王賞は、『灰かぶりの青春』(F M鹿児島)が選ばれた。

“界の発想”を打ち破り、新しい発想を
 公開審査会を終えて、スポンサーと特別審査委員より感想が述べられた。はじめに、バイク買取専門店「バイク王」を運営する、株式会社アイケイコーポレー ションの今井清美メディアプロモーショングループ・マネージャーより、「弊社を大変良く研究していただき感動して聴いていました。弊社は中古オートバイの 買い取りという業種で、難しいテーマだったと思うのですが、非常に良いCMを作っていただきました。ラジオメディアをこれからも活用したいと思います」と 感想をいただいた。

 また、特別審査委員の弘兼憲史氏は、「今回、坂本竜馬や、仕分け、方言、俳句など、流行している言葉やテーマを用いたCMが多く、アイデアがどれも同じで固定化された感じがしました」。

 小野田隆雄氏からは、「統一部門は良い作品が多かった。スポンサーの商品に対するアプローチが今までで一番密度が濃かったと思う。特に、ストーリーの長 いものの中に良いものがあった。スポンサーのことを話すのはアナウンサーでも良いが、そのほかのことを話す人は、十分人選を考えてほしい。ラジオCMは、 人の顔は映らないので、出てくるキャラクターや登場人物を選ばないとスポンサーが損をする。そのことを考えて作っていただきたいと思います」と続けた。

 そして、特別審査委員長の天野祐吉氏は、「ラジオやテレビのCMを、聴いている・見ている人は、ちゃんと聴いている・見ていると思っているかもしれない が、全然ちゃんと聴いていない。早口でポンポン言われると、何を言っているのかわからないうちに終わってしまう。ラジオCMで大事なのは、うまい下手では なくて声の質。出演者は声の質で選ぶといろいろなバリエーションが出てきて、声が持っている膨らみで、いろんなイメージを作ることができると思います。ア ナウンサーの声はいい声だからメッセージを伝えるにはいいのだけれど、イメージを伝えるにはあまり役に立たない。その点を考えた方がいいと思います。“界 の発想”という言葉があって、その世界の中にいると、自分のいる世界のことが常識になっていて、変なことをやっていても平気で、そこから抜け出られない。 放送界では、いい声の人がいい、早口でしゃべれないといけない、というのが常識になっているので、“界の発想”をどう破るかが課題だと思う。アナウンサー の声でスポンサーのことを褒め称えると耳をふさいでしまいます。これからは、“界の発想”にとらわれない方法を考えてほしい。新聞や雑誌など、ほかの世界 より、ラジオのクリエーターは汗をかいていない気がするので、もう少しクリエイティブ的に考えることも必要。ただ、ラジオが一番今までの常識を破りやすい ので、もっと考えて作ってほしい。20秒、30秒というCMの時間枠などを取っ払って新しいことを考え、挑戦してほしいと思います」と、それぞれが感想を 述べた。

CM部門大賞 FM福岡 企画部門大賞 TOKYO FM
統一部門バイク王賞 FM鹿児島 第1部門最優秀賞 FM山口 第2部門最優秀賞 TOKYO FM

新たな賞も加わったJFN受賞式
  例年と同じく、JFN賞授賞式は、TOKYOFMの2階ホールで行われた。今回から新たに企画部門に、地域賞が設けられ、地域への貢献が顕著に見られた5企画が表彰された。
  授与に先立ち、後藤亘JFN会長・TOKYOFM取締役相談役より、「一年があっという間に経ち、年に一度、ここでお目にかからせていただく回数もずいぶんと増えました。長い間、特別審査委員の天野先生、小野田先生、弘兼先生をはじめ、JFN加盟社の社長や関係者の皆様には、大変お世話になり、お礼申し上げます。また今回は、アイケイコーポレーション様にもお世話になりました。今、我々を取り巻く状況は厳しいのですが、このようなときこそ逆にチャンスととらえ、新しい時代に向けて、新しいビジネスモデルを構築していただきたい。この放送業界が独り勝ちすることがなかなか出来ないのは、放送業界、メディア業界独特のビジネスモデルが不足しているからだと思います。従来のモデルから、どう脱却して、どのように新しいモデルを構築していくかが我々に課せられた課題であり、使命だと痛切に思っております。これからも皆様と一緒に、新しいビジネスモデル、新しいコンテンツを作っていきたいと考えております」と挨拶が述べられた。

ラジオの繁栄はクリエイティブ力を高めること
それぞれCM部門の受賞作品の発表と、各受賞局にトロフィーと賞状が授与された。CM部門の審査にあたった審査員より感想が述べられた。はじめに登壇し た、統一部門のスポンサーである株式会社アイケイコーポレーションの今井清美マネージャーは、「ラジオを通して私どものサービスがどのように伝えられる か、見守っていましたが、期待した以上のCMができて満足しています。今まではナショナルクライアントさんのCMが多かったのではと思いますが、これから は、私どものようなダイレクトレスポンス企業のCMも多く扱っていただきたいと思います。ラジオ広告もまだまだダイレクトレスポンス企業の誘致ができるの ではないかと考えています」と述べたのに続き、特別審査委員から、感想と講評が述べられた。

 漫画家の弘兼憲史氏は、「受賞された各局の皆さん、本当におめでとうございます。実は、統一部門はなかなか難しくて、今まで面白い作品が集まらなかった んですね。おそらく秒数が短く、その中にスポンサーさんの意向を全部入れようとして、何を言っているのかわからなくなってしまった。今年は60秒という たっぷりした時間があって、質の高い作品が集まったように思います。以前、ある局の担当者が連続して賞を取るということがありました。これはおそらくCM 担当者の質によるものだと思います。今回は沖縄、九州関係の局が、賞を取りましたが、これは沖縄、九州の質が上がっている結果だと思いますので、担当者を 変えないようにして、いい作品を作ってほしいと思います」

 コピーライターの小野田隆雄氏は、「先日、鹿児島に行き、灰のことを“へ”というのだと知りましたが、皆さんの作品の中に方言をうまく使っている作品が 多くあり、これも良かったと思います。日本は南北に長い列島なので、各地にいろいろな方言がある。そういう言葉はだんだん忘れられていく傾向にあります。 お年寄りは覚えているけれど、若い人たちの中には、方言を知らない人が増えている。これからも方言を大切に残して、いいものをたくさん作ってほしいと思い ます」

 最後に、特別審査委員長を務めたコラムニストの天野祐吉氏は、「皆さん、おめでとうございます。今年も統一部門の優秀賞は方言を使っている作品です。方 言には何があるかというと、人間的な温もりがある。ラジオは音だけの世界ですが、むしろ、聴くものではなく見るものであり、逆にテレビは見るものでなく、 聴くものであるという声もある。ラジオは、そこで何が言われているのか、ではなく、何が見えるかが問題なんですね。人の顔が見えている、温もりがあるのが 方言だなと思いました。ラジオの広告収入は時間を売っているのではなく、クリエイティブ力なんですね。20秒のCMでもクリエイティブ力によって、2時間 のCMにも匹敵する。つまり、クリエイティブパワーを買っているんですね。そして、クリエイティブの力を発揮するのが制作者なんですね。クリエイティブを 育てることがラジオ局を繁栄させることに繋がるわけですから、これからは制作者のクリエイティブ力を大事に育てていっていただきたいと思います」
天野 祐吉氏 小野田 隆雄氏 弘兼 憲史氏 今井 清美氏
特別審査委員長
天野 祐吉氏
特別審査委員
小野田 隆雄氏
特別審査委員
弘兼 憲史氏
アイケイコーポレーション
今井 清美氏

 CM部門の授賞式に続いて、企画部門の受賞局の企画が紹介された。大賞は、「ショパン生誕200年記念Panasonic presents 横山幸雄ショパンプロジェクト〜世界中に音楽を贈ろう〜」(TOKYO FM)が受賞した。特別賞は、FM岡山の「FM岡山 放送事故通期ゼロの達成」が受賞し、優秀賞は、FM北海道とFM沖縄の2局が、奨励賞は、FM岩手、FM香川、JFNCの3局がそれぞれ受賞した。また今 回、新たに設けられた地域賞は、各ブロックの中から、5局に授与された。
 最後に、冨木田道臣TOKYO FM代表取締役社長・JFN賞選考委員長の挨拶があり、2010年のJFN賞授賞式は閉幕した。



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